STORY 4-3

学科試験の勉強法 3 
試験 Tips&Point

計算問題!どうする?どうなる!

今計算以外の場所を勉強してるんですけど、やっぱこの後、計算問題もしないといけないと思うと不安で不安で。
野田さん
たしかに、学校を卒業されてから久しぶりに計算問題をしないといけないとなると、気後れしてしまう方もいらっしゃいますね。
ただ、計算問題の比重は他の電気系の試験と比べるとそこまで高くないんです。
流川さん
先輩に聞いたんですけど、計算問題を捨てても受かるって。先輩もそうやって受かったって。
三輪さん
え!そうなの?だったら自分もそうしようかな…
野田さん
もちろん、計算問題を避けても第二種学科試験に合格できるという人もいますし、合格した人もいます。またそう勧める人もいます。でも確率として、合格に近づくと思いますか?
流川さん
確率としては難しくなりますよね。計算問題以外の問題をより多く正解にしないといけませんから。
三輪さん
計算問題以外でもまだ5割くらいしか正解にならないんできつそうっす…。
野田さん
そこはもうちょっと頑張れ〜。
三輪さん
仮に野田さんがもう少し頑張って他の科目で7割程度正解に取れるようになったとしましょう。残りの計算問題すべて捨てていいでしょうか?
だいたい計算問題が50問中10問、2割程度です。
流川さん
…となると残り40問×0.7=28問…6割の30問で合格として…あ、残り2問で合格できる!
三輪さん
つまり計算問題の10問中の2割です。これは単純に鉛筆ころがしでも1/4の25%ですので「計算問題を捨ててもよい」という人たちの根拠です。
流川さん
な…なるほど、じゃあ頑張ってその他の問題を7割にしよう…。
野田さん
ただし、それが6.5割になると、計算問題は4割の4問が必要になります。こうなると計算問題を捨てては難しいですよね。一般的に本番になると練習中に比べて100点中5点くらい落ちるものですから、7割仮に取っていても、本番で6.5割くらいになることも十分考えられます。
流川さん
つ…つんだ…。
野田さん
また?
三輪さん
でも逆に考えると他の問題を7割近く取れれば、計算問題すべてをパーフェクトでなくてもよいともいえます。そうなると計算問題の中で、自分でできそうなものを2問から3問見つけておき、それだけは必ず取るという方法が取れますね。
流川さん
でも、どういった計算問題を勉強したらいいんですかね。
野田さん
まず必ず出題される問題に集中しましょう。
オームの法則を使った、直流回路の「合成抵抗」「電圧」「電流」をもとめる問題は必ず1問から2問出題されます。これは必須ですね。
流川さん
分数とか使うんですか?
野田さん
使います。
流川さん
ひょえー!
野田さん
どうしても計算問題が苦手な方は「分数が苦手」と思われることが多いと思います。
学科試験のテキストでは、その辺がすでにわかっているという前提で書かれていますから、置いてきぼりをくっているように感じられるかもしれませんね。
流川さん
ちらっとテキスト見たんですけど、いきなり数式で戦意喪失です。
野田さん
お気持ちはわかります。でももしかすると、それは単に食わず嫌いなだけかもしれません。
流川さん
え!そうなんですか?
野田さん
数学の苦手な方はまず提示されている計算式を見て、苦手意識を持ってしまわれると思うんですよね。
私がおすすめするのは、まず答えを見てしまうんです。
流川さん
え!?答えを見るんですか!?
三輪さん
野田さん
そして、その答えがどうやって導き出されるか、ゆっくり計算式を見ながらなぞってみます。
流川さん
ゆっくりなぞる…
野田さん
自力でできるようにですね、ここは少し時間をかけてください。
流川さん
時間をかけないといけないんですか?
野田さん
計算問題が苦手な方はここに時間をかけず、答えだけ見て飛ばしてしまわれることが多いんです。それですと自力で答えを出す力がなかなか身につかないんです。
流川さん
やっぱり、自力で答えられるようにしないといけないんですね。
野田さん
そうですね、それを確認するために、今度は白紙の状態で問題をやってみます。これは自分で何もない中、計算式を書きながら答えを出すのです。
これを繰り返して、体で答えの出し方を覚えてくと徐々に身につき、一度身に付くとそのやり方は忘れなくなります。
流川さん
忘れなくなるんですか!
野田さん
体で覚えたものは、なかなか忘れることができません。
計算問題で、ほかによく出題されるものには「電圧降下」「電力損失」の問題があります。
これらも同じように「まず答えを見る」「どのような方法で導きだしたかゆっくりなぞる」「何もない状態で同じようにやってみる」を繰り返してください。もしそれでも難しい場合は私に遠慮せず聞いてください。
流川さん
私も手伝うよ!
三輪さん
ありがとう!ミワっち!心の友よ!
野田さん
その呼び名定着させようとしてる?
三輪さん

暗記が苦手…何をどうやって覚えるの?

私は、計算問題は一通りできそうなんですけれど、言葉が難しすぎて…。なかなか頭に入ってこないんです。
三輪さん
たしかに、電気工事士学科試験に出てくる用語は一般では見ないものですし、似たような名前のものや同じものなのに別の名前があったりと初心者の人を悩ませるようなものも多いですね。
流川さん
今まで単にブレーカと言っていたものが「漏電遮断器」「配線用遮断器」「過電流遮断器」とか、いろいろな種類になっていて、そういうのもすごく難しく感じます。
三輪さん
そうですね。そういった難しく感じる言葉や文章なども覚えるコツがあります。
一つは、文章だけでなく実物を見たり、写真などで確認したりすることです。もし安全で問題がなければ触れることもできます。例えば、会社の倉庫にそのような材料や器具もありますから、今度皆さんと一緒に見てみましょう。
流川さん
ぜひお願いします!
三輪さん
野田さん
それだけでなくても、例えばインターネットで検索して写真などを確認するのも良いですね。こういったことをするだけでもしっかりと記憶に残るようになるんです。
それともう一つは、その理由や理屈に注目することです。例えば接地工事など試験で出てきますが、なぜこういった工事が必要なのか、ないとどういったことが起きるかなど知ることが重要です。
流川さん
ないとどうなるんですか?
野田さん
例えば、電気が実際に使われるようになったのは明治時代ですが、その時、まだ電気工事のルールも確立しておらず、接地工事がなされていなかったんですね。もちろん漏電遮断器もありません。
そんな中、神田にあった牛肉店で女中さんが電線に触れて感電死しているんです。まだ年齢は15歳と本当に若い娘さんでした。
もう少し安全な配線、接地工事もしくは漏電遮断器があれば助かったかもしれないですね。こういったことが無いようルールが明確になり、配線方法のルールの確立、接地工事がなされたり、器具が設置されているんです。
流川さん
…ということは、そういったことを覚えるということは単に試験に受かるというだけでなく、電気を使う人の命を守るのに重要ということなんですね!
三輪さん
いいところに気が付きましたね。まさにその通りです。ですので、その用語や文章を単に機械的に覚えるというのではなく、その目的を意識しながら覚えていくとだいぶ覚え方も異なってきます。
それともう一つ、繰り返しは記憶の母と言います。一度覚えて終わりではなく、何度も繰り返すことで記憶に定着させることができます。
苦手な部分があればあえてその部分をピックアップして、何度も繰り返し問題をやってみましょう。
流川さん
なんとなくできそうな気がしてきました!
三輪さん
①視覚で覚える②なぜ、どのようになど理由やプロセスで覚える③繰り返す。この3セットで暗記問題を乗りきりましょう。
流川さん

試験問題の表現で混乱する?

さて、試験問題では、みなさんが引っ掛かりそうなところを少し注意したいと思います。
流川さん
何か引っかかりそうなところがあるんですか?
三輪さん
電気工事士学科試験の問題では、「正しいものは」「誤っているものは」「適切なものは」「不適切なものは」と答えがまるっきり逆になるような設問で出題されるんです。
焦っているとこれを間違えることもよくあるんです。
流川さん
「適切なものは」「不適切なものは」…一字違いだけど大違いだよなー。
野田さん
これは第二種電気工事ではなく、第一種電気工事の学科試験ですが、「誤っていないものは」という表現も使われたことがあり、こうなると一瞬迷いますよね。
流川さん
「誤っているものは」と間違えそう…
野田さん
ですので、必ず「正しいものを選ぶのか、誤っているものを選ぶのか」を確認してみましょう。特に試験中、焦っていると少し見ただけで勘違いする危険がありますから、ここは要注意ですね。
流川さん

手抜きしてもよい問題ってある?

やはり、勉強ってパーフェクトにしないといけないんですか?すごく範囲が広い気がするんですけれど。
三輪さん
確かに、電気理論から、配線設計、材料・工具、施工方法、検査方法、法令、配線図とかなり広範囲ですよね。

でも、ここだけの話ですけれど、少し手抜きしてもよいかなという問題もあります。
流川さん
え?手抜き!教えてください!ぜひぜひ!
野田さん
…あまり食いつかれても困りますが…。試験問題の中には、覚える労力に比べてそこまでも出ないという問題もままあります。
例えば、法令の科目で出てくる「特定電気用品」と「特定電気用品以外の電気用品」これらはどれくらいの種類があると思いますか?
流川さん
ええと、100種類くらいですか?
三輪さん
いやいやそんなにないっしょ。そうじゃなくちゃ覚えられないし、30種類ずつくらいじゃない?
野田さん
「特定電気用品」が116品目、特定電気用品以外の電気用品が341品目です。
流川さん
え!全部で450以上あるんですか!?
三輪さん
絶っっっ対無理!
野田さん
そうですよね、これをすべてなんて無理ですよね。「するめ加工機」は「特定電気用品以外の電気用品」、みたいなのは、まあ試験には絶対出ないでしょう。しかも、試験で出るのは3年か4年かに1度程度。
ですので、過去問で出たところをサラッとやっていれば十分と言えますね。
流川さん
あー400も覚えなくてよかったー…。
野田さん
ほかにも、手抜きできそうな問題ってありますか?
三輪さん
まあ、手抜きって言われると語弊がありますが、似たような労力の割に出題数が多くないものに、「電気計器の記号」がありますね。これも、なかなか覚えにくいわりに試験問題でもそれほどでない。出ても1問。しかも仕事でも使うことがあまりないものですね。
ただ出ないとも言い切れないので、過去問をやりながら覚えると良いでしょう。
流川さん

配線図ってむずくない?

あの、最後にある「配線図」って何なんすか。いきなり図面見せられて、難しい条件が書いてあって…。
野田さん
たしかに、あの図面を見ながら問題も見て答えるというのはだいぶ大変です。
三輪さん
試験問題の中でも、少し特殊に見えるかもしれませんね。でも皆さん現場に入って工事をするとき何を見ますか?
流川さん
…図面ですか?
野田さん
そういえば図面を先輩たちは見てますね。
三輪さん
そのとおりです。それまでの一般問題はあくまで電気工事の基礎的な問題ですが、「配線図」は実際に現場で図面を読んで工事をする能力があるかを見ているのです。
流川さん
たしかに図面を読んで仕事をするのが電気工事士です。
三輪さん
ビッグな電気工事士になるのに必須ですね!
野田さん
ですので、実際に「配線図で示された建物を自分で工事するんだ」という気持ちで見てみるとだいぶ違います。
流川さん
でも、まだそんなに工事をしたこともないし、先輩が図面を見ているのを眺めているだけだから、なかなか難しく感じて。
野田さん
そうでしょうね。そんな場合は、まず具体的イメージを広げてみましょう。例えば「図は、木造2階建住宅の配線図である」と書かれていたら、具体的に2階建て住宅を思い浮かべてください。
流川さん
あ、実家が思い浮かんできました。たしか、家を建てたとき木造で大工さんが仕事をしていたような…。
野田さん
わたしも家の近くにある建築中の住宅を思い浮かべました。
三輪さん
そして、その建物にどのような器具がつき、どのように配線されるかを考えながら問題を解いていくわけです。
実際に、電気工事をするときにはこの配線で使う電線はどれか、図面を見て考える必要があるわけですね。
その記号にある器具は何か。何台必要か。工事する時のルールは。電線同士を接続するときどのようにすべきか。すべて配線図から判断します。
これらを小規模な形で再現したのが配線図問題です。
そして、最初は難しく感じていても、今後電気工事を行う時には必須ですので、この配線図問題をきっかけにぜひ図面を読むことに慣れてみてください。
流川さん

複線化が難しい!

けっこう複線化が厳しいです…。
三輪さん
自分もやってみたけど、最後に頭の中がこんがらがって…。
野田さん
なかなか皆さん苦戦されているみたいですね。どのあたりが難しいですか?
流川さん
接地側電線、非接地側電線というのが、徐々にどっちがどっちかわからなくなって混乱して、たくさん線を書いてしまいます…。
野田さん
わたしはどの線とどの線を接続するのか、いつも迷います。
三輪さん
なるほど、でも一通り複線化をやってみたんですね。まずやってみることが大切です。ときどき書籍の複線化を眺めるだけで、いざ本番で「できない」という人もいますけれど、やはり自分でやってみないとできるようになりません。
そのうえで、皆さんの問題点を見てみましょう。
まず、野田さん。どれが接地側電線か非接地側電線かがわからず、たくさん線を引いてしまうと。
これは初心者が陥りやすいところですね。
流川さん
はい…陥りやすい初心者です…。
野田さん
…。それでは、接地側電線を「帰ってくる電線」非接地側電線を「行ってくる電線」と仮に考えてみてください。
流川さん
この「行ってくる電線」と「帰ってくる電線」の間に負荷を入れるとちょうど行って返っての電気のループになり、その負荷に電気が送られます。
流川さん
つまり電気を負荷で使えるようにするには、「行ってくる電線」と「帰ってくる電線」が必要になるんですね。そして「帰ってくる電線」は最終的に接地工事がなされているんです。それで「接地側電線」と言います。
流川さん
そして、この接地側電線、帰ってくる電線は地面につながっています。地面は対地電圧何Vですか?
流川さん
0Vです。
三輪さん
え、なにそれ?
野田さん
ですのでこの、「帰ってくる電線」は「行ってくる電線」とつないでない状態では、触っても電気が流れないということです。
器具は、その器具を使ったり、照明であれば電球交換など人が触れるおそれは高いですよね。
スイッチは充電部が内部にあるので、人が触れにくいです。野田さんでしたら「帰ってくる電線」、「行ってくる電線」、どちらにスイッチを設けたほうが安全と思いますか?
流川さん
えーと…、スイッチの方が人に触れにくいから、スイッチが行ってくる電線ですか?
野田さん
そのとおりです。スイッチに行ってくる電線、つまり非接地側電線。器具に帰ってくる電線、つまり接地側電線が直接つながるような配線になります。
流川さん
これが、接地側電線、非接地側電線を区別する理由です。より安全を確保できるように配線しているんです。
流川さん
やったー!当たった!これで複線化もばっちりだー!
野田さん
もちろんこれは一番簡単なものですが、基本になります。
そして次の三輪さんの「どの線を接続するのか迷う」も原則この回路が理解できるとほぼ8割の回路が理解できます。
この図で、色が違う電線同士を接続しているはどれですか?
流川さん
器具とスイッチをつないでいるところです。
三輪さん
そのとおりですね、あとは同色で接地側電線は白、非接地側電線は黒を接続すればいいんです。
この部分を「スイッチ結線」と言います。この部分が例えばスイッチが増えて複雑になっているように見えるときもありますが、原則は同じです。
①「接地側電線」、②「非接地側電線」、③「3路、4路スイッチ間の接続」、④「スイッチ結線」の4種類の接続がありますが、このスイッチ結線がどれでどのようにつながるか、この図を頭に入れておいて何度もやってみるとできるようになりますよ。
流川さん