• 電気工事士の先輩紹介

電気工事士の先輩紹介

今までは、野田くん・三輪さんが所属する電気工事会社のお話が中心。でもリアルな電気工事士ってどうなんでしょう?そこで、ここでは実際に電気工事の現場で仕事をされている、女性の方、若手の方、またベテランの方にそれぞれ話を聞いてみましょう。

「ものづくりの楽しさ、完成した瞬間の感動を 味わってほしい」

<前中由希恵さん(なないろ電気通信株式会社 (一社)女性技能者協会 代表理事)>

女性の電気工事士として現場で働いておられ、現場で働く女性技能者を支援する(一社)女性技能者協会の代表理事を務めておられる前中由希恵さんにお話を聞かせてもらいました。

●イベント準備の現場にお邪魔しました!

前中さんはじめまして!
三輪さん
うわー!竹がたくさん!
野田さん
こんにちは!三輪さん、野田くん。
作業場にようこそ!
前中さん
これは何を作っているんですか?
三輪さん
お祭りで使う竹あかりの制作をしています。地域を盛り上げるこういったイベントに電気技術で協力しているんですね。
前中さん
自分もモノ作りが好きで、電気工事士になったんですが、こういう地域活性化でも電気の知識って活用できるんですね!
野田さん
現在はまだ育休中なので現場復帰に向けて、丁度自宅から近く、育児との両立しやすい環境で作業しています。 
前中さん
出産後も電気工事の仕事をされておられるんですね。
三輪さん

●アルバイトから電気工事士へ

前中さんは私と同じ女性ですけれど、どうして電気工事になろうと思ったんですか?学生時代も電気を勉強されていたとか・・・。
三輪さん
実を言うと私は電気と関係ない工業高校のファッション工学科を卒業したんです。
前中さん
へ〜!そうすると電気工事については、学生時代にはそこまで知っていたわけではないんですね。
三輪さん
就職もアパレルなどを目指していたんですが、そちらにはうまく行けなくて、卒業式の目前の春休みにたまたま知り合いの電気工事士の親方にアルバイトに誘われたんです。
前中さん
最初はアルバイトがきっかけだったって意外ですね!
野田さん
アルバイトでは、大量に取り付ける照明器具の梱包バラシなどをやっていたんです。
前中さん

●資格を取得して本格的に電気工事へ

でも、アルバイトで終わらなかったのがすごいですね。どんなきっかけがあったんですか?
三輪さん
いつのまにか電気工事士受験の講習会を受けることになって、受験したらなんと一発で合格してしまったんですね。
前中さん
すごい!初めての受験なのに合格できたんですね。
野田さん
翌年には電気工事士の免状があって、そうなるとうれしいじゃないですか。次の現場も一緒に行くぞと親方に言われて、そういったことがあって電気工事の道に進んでいったんですね。
前中さん

●電気工事の仕事の内容

電気工事はどんな仕事を主にやってこられたんですか?
三輪さん
新築のマンション工事やテナントの工事などをやっていますね。
前中さん
あ!自分も今、マンションの新築工事をやってます!
野田さん
私もテナント工事をしたことがあります。
三輪さん
野田くんは他業者の方とうまくやっていますか?
前中さん
たぶんうまくやれていると思います!
・・・でも昔の電気工事士は苦労したって先輩から聞いたことが・・・。
野田さん
そうですね、昔は大変だったんですが、今はだいぶ良くなったんですよ。
前中さん

●電気工事士になって大変だったこと

大変だったって・・・どんなことがあったんですか?
三輪さん
他業者の人に下に見られて、理不尽なことを言われたこともありましたね。また「女性には無理」と言われたこともあります。
前中さん
ひえ〜きっつ!
野田さん
うわ〜・・・嫌ですねそれは。
三輪さん
そう言われても20年近くやってこれたんです。たとえ否定的なことを言われても、コミュニケーションを取っていけば人と人なんできっと分かり合えると思うんですね。
前中さん

●電気工事士になって良かったこと

逆に電気工事士をしていて良かったことなどありますか?
三輪さん
あかりを灯す事を通してまちづくりに関われる事ですね。 橋のライトアップの経験もあるのですが、電気工事士のスキルを手段として、自分が好きなあかりを灯すという事を経験させていただき、たくさんの方に関われる事はおもしろいです。
前中さん
ライトアップしたときに「自分でやったんだ!」って思えますよね!
野田さん
地域社会に貢献してるって感じ、いいですよね。
三輪さん
仕事の中でも、竣工前に点灯試験をして、一発ですべて点いて「やった!」と思う瞬間は一番好きですね。しんどいことも多いですが、こういった瞬間が自分の中で誇らしい事でもあるし、電気工事最高!って思います。
前中さん

●電気工事士に興味のある人に伝えたいこと

これから電気工事の業界に入ることを考えている人に伝えたいことってありますか?
三輪さん
興味があるならぜひチャレンジしてほしいですね。興味がなかった私でもこれだけ続けてこれているんですから。
前中さん
自分も先輩の言っていること最初はわからないことが多かったけど、わかってくると面白さが徐々に伝わってきました!
野田さん
そうやって興味って育つよね。
三輪さん
また、これはこれから若い人たちが入ってきたときに指導する方たちが心がけてほしいことなんですが、最初にただよくわからない作業をさせるだけでは今の時代通じないと思うんですよね。資格の問題などもありますが、楽しめるようなこともさせてあげることは大切だと思いますね。
前中さん
私も現場では、この作業がどういった意味があるか先輩から教えられて作業にあたります。
三輪さん
自分も次に自分が目指すべき目標を話してもらってます!
野田さん
また最初から完璧を目指さなくてもよいと思います。皆がフォローしてくれますから、思い切って取り組んでいっていただきたいですね。
前中さん
私もやさしい先輩たちに支えられて仕事が続けていけている部分は大きいですね。
三輪さん
またものづくりの楽しさ、完成した瞬間、照明が点灯する感動など、ぜひ皆さんに味わってほしいですね。
前中さん

「電気工事をやっていると日々のやりがいがある」

<宮﨑哲郎さん(棚橋電機株式会社)>

電気工事士として3年目の宮﨑哲郎さん。これから第一種電気工事士取得に必要な実務経験を積まれる直前ということで、若手としてどのように感じておられるかお聞きしました。

●事務所にお邪魔しました!

宮﨑さんこんにちは!
野田さん
初めまして棚橋電機の宮﨑です。
宮﨑さん
宮﨑さんは私たちと同じ第一種電気工事士の試験に合格して、実務経験の3年がもうすぐなんですよね。ほかにも資格を持っているんですか?
三輪さん
第三種電気主任技術者と消防設備士甲種4類・乙種7類を持っています。
宮﨑さん
電験三種(第三種電気主任技術者のこと)持ってるなんてすごい!ほかにも目指している資格はありますか?
野田さん
電気工事と電気通信工事の1級施工管理技士を、第一種電気工事士を取得したら挑戦したいと思っています。
宮﨑さん
電気工事に必要な資格をいろいろ取られる予定なんですね!
三輪さん

●きっかけは家業から

宮﨑さんはなんで電気工事士になられたんですか?
野田さん
祖父と父が電気工事士の会社を経営していました。それで大学卒業後に電気工事の道に入ったんですが、周囲を見ると珍しいと思うんです。
宮﨑さん
電気工事について子どものころからよく知ってらっしゃったんですね。
三輪さん
小さいころから仕事を見てきたというのはありますね。実家に電線があったり、電気工事が割と身近にあったと思います。
宮﨑さん

●現在の仕事の内容

現在はどんな仕事をされてるんですか?
野田さん
会社が制御の絡んだ電気工事が強いこともあり、工場などで制御盤の設置や電源の配線、さらに設置された制御盤の改造などしています。
さらに高圧の電気設備の機器の交換なども行うこともあります。
宮﨑さん
工場などの改修・増設や保守工事を行ってるんですね。
三輪さん
いっしょに働いている先輩はどうですか?
野田さん
最初はとっつきにくい「職人」という感じはしますけれど実際は優しく教えてくれますね。話してみて面白い人やいろいろ物知りの人などいます。
宮﨑さん
そういう先輩だと仕事をしていても安心ですね。
三輪さん

●楽しいことはある?

仕事をしていて楽しいことってありますか?
野田さん
僕は配線がきれいにできたときなど楽しいですね。うまくいった!って感じです。
宮﨑さん
わかります!私もきれいに配線をしたいほうなので、ピシッと並んだ配線は気持ちいいですね。
三輪さん
制御盤を組んだりするときもきれいにできたときはうれしいですね。
宮﨑さん

●驚いたことや苦労したことは?

家業が電気工事だったので知っていることは多いと思いますが、実際に仕事をして驚いたことってありますか?
野田さん
実際に使う電線の太さです。試験など1.6mmや2.0mmですが実際に配線するときには太くて重いんで驚きました。
宮﨑さん
幹線とか、太くて重い配線をするときには応援を呼ぶときもありますもんね。
三輪さん
じゃあ、苦労したことはありますか?
野田さん
電気工事って力仕事が多いですね。僕はそこまで体が大きくないので最初はそれが大変でした。徐々に慣れてきましたけれど。腰道具もけっこう重たいですよね。
宮﨑さん
私も女性ですから、たまに重たい物などは手伝ってもらったりすることありますね〜。
三輪さん
あと金属管工事の曲げ作業などもあるのですが、苦手でうまくなりたいと思っています。
宮﨑さん
あ〜あれ、年中やるわけではないですもんね。
野田さん
工事をするときになると思い出しながらやっています。
宮﨑さん

●業界に入りたい人に伝えたいことは?

これから入ってくる人にメッセージはありますか?
野田さん
電気工事をやっていると日々のやりがいがあると思いますね。いろいろな工具の使い方がわかって、技能が身についていくことを実感できますね。
宮﨑さん
手に職がつくって感じ、いいですよね!
三輪さん
工事が終わった後の達成感もありますね。
宮﨑さん
そういうことも、これから入ってくる後輩に伝えたいな〜!
野田さん
どんどん若い人が入ってきてほしいですね!
宮﨑さん

「答えがない、答えづくりをするのが楽しい!」

<棚橋 秀行さん(棚橋電機株式会社 代表取締役社長)>

電気工事会社を経営され、現在でもプロの視点で現場を精力的に回り、高い安全の基準の順守を徹底的に進めるなどされておられる棚橋秀行さん。そのようなプロフェッショナルな視点から見た電気工事の魅力を話していただきました。

●事務所にお邪魔しました!

棚橋社長、お久しぶりです。
野田さん
三輪さん
こんにちは、野田くん、三輪さん。頑張って仕事をしてる?
棚橋さん
まだまだ勉強することが多いですが、日々頑張っています!
野田さん
私もだいぶ仕事に慣れてきたとはいえ、まだまだなところがあるので、一生懸命仕事を覚えているところです。
三輪さん
日々努力されているね。若い方々が頑張って電気工事を続けておられるのを見るとうれしいよ。
棚橋さん

●電気工事士になった理由(わけ)

社長が電気工事士になったきっかけって何だったんですか?
三輪さん
あれ?言ってなかったっけ。家が電気工事をしてたからだよ(笑)。
棚橋さん
でも家が電気工事をしていても電気工事を必ずするわけではないじゃないですか。
野田さん
実家の電気工事会社で職人さんを見るわけ。盤の組み立て作業なんかも見る。そこで遊ぶのはドライバーやペンチやニッパなどを使うんだよ。もともとそういう環境なんだ。
そこで見る職人さんはカッコいい。作業服着て、腰道具して、脚絆(すねに巻く布)巻いて、安全靴履いて。子どものころそういう姿を見てカッコいいと思ったね。
棚橋さん
確かに電気工事士の姿は絵になりますよね。
三輪さん
でも大きくなってから実際にやりたかったのはダムとか変電所、橋等、形になる大きなモノを作りたかったというのはあるね。でも最終的には電気工事の方になるけど。
棚橋さん
家の電気工事業を継ごうと思って目指されたんですか?
野田さん
いや、それはなかったな。大学の先生の紹介で別の電気工事会社に入って、PLCなどの制御をやっていたんで、できる人がいないんで休みの日などにソフトをつくったりとかもしてたね(笑)。
棚橋さん
制御のお仕事なんてすごいですね。
三輪さん
大学は2部(夜間)だったんで昼間や休みの期間は電気工事をしてたね。
棚橋さん
学生時代から電気工事をされていたんですね。
野田さん
そこでペンキ塗りから穴掘り、配管など一通りの電気工事をしてきたね。
棚橋さん

●現場を見ることの大切さ

現場には出ていらっしゃるんですか?
三輪さん
出ているよ。新しい案件や難しい場所の現場調査などに行っているね。最初の構想設計は現場を見に行って社内で話し合ってから見積もりを出すなどをしているね。
棚橋さん
現調(現場調査)もされてるんですね!
野田さん
それと現場の安全管理・環境管理などを行っているね。
安全については、他の会社についても問題があれば指摘するね。お得意さんにもきちんと言うね。
「脚立は天板乗ったらあかん」とかね。
棚橋さん
事故でけがをしたら大変ですからね・・・。
三輪さん
僕は現場が好きだから、3現(現地・現物・現実)を見ることを大切にしてる。「現」という字は、王が見るって書くからね。そういった視点で見なくちゃいけない。
棚橋さん

●経営者として苦労していること

苦労していることはありますか?
三輪さん
やはり、人だよね。若い人がなかなか入ってこない。僕らは工場で工事をしているから、どうしても工場が止まる休みの時期が仕事になる。2000年問題や2001年問題の時は正月に行ったこともある。
棚橋さん
自分も含めて若い人だと「ちゃんと休みが取りたい!」ってのがありますね〜。
野田さん
まあ、正月出社などはさすがに幹部たちだけで対応したけれど。
われわれはトラブルにいつでも対応するという意識だけど、今の若い人にそこまでの意識を持ってもらうのはなかなか難しいね。
棚橋さん
休みを返上してまで仕事をするという意識はないですね・・・。
三輪さん
社会も変わってきていて休みの時は来なくてもよいというふうにはなりつつあるけどね。
それでも休みでないと止められないところはどうしてもあるよね。活線(電気を止めない状態で)工事はやりたくないからね。
棚橋さん
働きやすい職場環境も作ってらっしゃるんですか?
野田さん
もちろん。女性も働きやすいように別々のトイレやロッカー、男女で同一の職種で同一の賃金体系にしている。また資格取得についても資格手当を出してるよ。
棚橋さん
資格手当も手厚いんですね。
三輪さん
そうは言ってもしんどい仕事であることはあるね。夏は暑いし、汗だくになる。だから空調服なども支給してるけどね。そこまでやってもなかなか人が来ないのはあるね。これは何もうちだけじゃなくて設備業全般で言えることだけれど。
棚橋さん

●電気工事の魅力とは?

電気工事をしていて楽しいことって何ですか?
野田さん
それは達成感だな。お客さんに喜ばれることや大きな施設に電気が点いたり、制御をやっているから機械が動いたりしたら、大きな達成感を感じるよね。
あと社会に役立っていることもあるね。皆電気や制御を使って生産しているんだからね。
棚橋さん
社長は人工衛星「まいど1号」などの仕事もされていますよね。
三輪さん
今は月面ロボットのプロジェクトをやっているよ。大阪万博でも展示される予定だね。
棚橋さん
わ〜、電気や制御の技術がそういった場所に使われることもあるんですね!
野田さん
これから電気工事の業界に入ってくる人に、何かアドバイスはありますか?
三輪さん
学校では、「答え」が決まっているかもしれないけれど、我々が仕事で取り組む課題には「答え」が無い。その答えづくりをするのが楽しいと思うよ。
新しいものを作っていくことが「電気工事」なんだね。奥が深いよ。今後は、設備を見るドローンやEV(電気自動車)や情報通信、非接触給電などなど、電気工事周辺もいろいろな技術が出てくると思うけれど、それをどう応用するかなどを考えることも楽しいものだね。
棚橋さん
自分もそういった世界で仕事をしてるって改めて思いました!
野田さん
ベテランの技術者の方から聞くと改めて重みがありますね。今日はいろいろ教えていただいてありがとうございました!
三輪さん