STORY 5-6

技能試験の練習法 6 
コラム:技能試験で使う工具の選び方

練習がそこそこはかどっている野田くんと三輪さん、作業が終わり、作品分解中に工具について話しています。

圧着工具はどんなのがいいの?

三輪さん、三輪さん。
これ先輩から借りたんだけど、すごいちっさな圧着工具。
これなら持ち運びしやすいし、三輪さんにもあってると思うんだよね。
野田さん
えー、自分用のもうあるし〜…。
三輪さん
だって大きい方が作業しにくいと思うよ。その点、この小さい圧着工具は扱いが楽そう。そうですよね、流川さん。
野田さん
大の刻印部分を省略して柄が短くなったものですか。
確かに小さいんですが・・・。
流川さん
…ですが?
三輪さん
野田さん
私は、三輪さんにはその圧着工具をお勧めしません。
流川さん
えっなんで!?
野田さん
圧着工具は特に握力が必要な工具です。三輪さんも練習していてそう感じられませんでしたか。
流川さん
心線が4本とか入ると、本当に両手でもなかなか圧着接続ができませんでした。
三輪さん
そうだったのか…。
野田さん
握力がそれほどない方、女性の方には多いと思いますが、そういった方は柄の長い圧着工具をお勧めします。
流川さん
これは、てこの原理で、柄の端の方を持てば、握力がそれほどでなくても圧着接続をしやすいんです。小さな圧着工具ですと、それをするだけの柄の長さが十分にないのです。

もちろん野田さんのように、ある程度握力があれば、こういった小さな圧着工具でも良いでしょうし、持ち運びやすさにメリットを感じられるかもしれません。
流川さん
小さいからって、扱いやすいわけじゃないんだ。
野田さん
でも何度も繰り返すうちに長い柄の圧着工具の使い方も慣れてきました。
三輪さん
そうですね。まず、工具は見た目だけではなく、実際の扱いやすさを見てみると良いでしょう。
流川さん

スケールが良いの?定規が良いの?

第二種電気工事士の工具セットの中に、布でできたスケールがあったんですが、これでもいいんですか?
三輪さん
一応、大丈夫ですよ。
流川さん
でも、私たちは金属製のスケールを使っていますよね。
三輪さん
そうですね、それぞれメリット、デメリットがありますね。ちょっと解説しましょう。
流川さん
まず、布スケールは安いというのがあります。多分そのセットは他のセットに比べて安かったのではないですか?
流川さん
あ!確かに、少し安かったような。
三輪さん
では、安くて便利なら実際の現場でも使われていますね。でも現場で布スケールを見たことがありますか?
流川さん
確かに見たことありませんね。
三輪さん
そもそも腰道具に入れられないよね。使いにくそうだし。
野田さん
そうなんです。あれはあくまで試験に特化したもので、現場で使われることはありません。
ですので、電気工事用の工具と見てよいかどうかはかなり難しいですね。
流川さん
やっぱり、きちんとしたスケールの方がいいんですか?
三輪さん
布スケールの場合はまっすぐにするには、下面に置くか、両側をしっかり持つかしなければなりませんが、金属製のスケールは片手で計測できます。それだけで作業速度があがりますね。

さらに折りたたんだりせずに、自動的に巻き取りますから収納も一発ですみます。

また、皆さんのお使いのスケールはストッパがついていますので、ある程度の長さで固定もできるんです。これは現場で使っているスケールと全く同じ機能なんですね。
流川さん
やっぱり、スケールも試験だけにしか使えないものより、プロも使っているほうがいいですね。
三輪さん
それにビッグなスケールの自分にとっても、スケールはすごく大事だよ!
野田さん
(「ビッグ」「スペシャル」「スケール」だけで野田くんって表せそう)
三輪さん
…(永ちゃん?)
流川さん

ケーブルストリッパーはどんなものが良いの?

また、先輩から借りてきちゃった!これぞプロ仕様のケーブルストリッパー!
よーし、これで試験本番を乗り切るぞー!
野田さん
(先輩と仲良いな…仲良い…のかな…?)
これはどうなんですか?流川さん。
三輪さん
なかなかいい工具ですね。まさにプロの電気工事士が使う道具です。いいと思いますよ。
ただ…
流川さん
…ただ…?(ゴクリ)
三輪さん
野田さん
2.0mmのケーブルには対応していないんですよね。
流川さん
(ズコッ)え?
野田さん
だから、このケーブルストリッパーだと、2.0mmのケーブルはナイフを使うか、別のケーブルストリッパーを使うかをしないといけません。
流川さん
だったら、工具セットにあった1.6mm、2.0mm両方に対応したケーブルストリッパーの方がいいんですか?
三輪さん
そうですね、その点については、ちょっと両方の特徴を比べてみましょう。
流川さん
まず、先ほどのケーブルストリッパー、こちらは、1.6mm用と2.0mm用にはっきり分かれています。
流川さん
でも、このケーブルストリッパーは現場でよく使われるんです。
流川さん
なんでですか?1.6mmと2.0mmが混在する場所なら2台持ってかなきゃならないのに…。
野田さん
このケーブルストリッパーならではの便利さがあるからです。

例えば、ジョイントボックスってたいていどこにあると思いますか?
流川さん
ええ…と…。
野田さん
天井裏です!
三輪さん
(先越された…)
野田さん
そうですね、天井裏でのジョイントボックスの作業では、あまり大きな動作はできないんです。他の配管にぶつかったり、あるいは活線つまり電気が流れている線に触れる可能性もある。

このため、ただ握るだけで外装はぎとりも、被覆むきもできる、このタイプのケーブルストリッパーは重宝します。
流川さん
なるほど、そういう場所では使いやすいんだ。
野田さん
それだけでなく、例えば分電盤作業などでは、大量の外装はぎとり、被覆むきが発生します。また新築の集合住宅のジョイントボックスの作業もそれこそ何部屋、何十カ所とそのような作業をするわけです。
このような大量に作業をする場合の省力化工具として、このケーブルストリッパーは役に立ちます。たとえそれが2台であっても、それくらいなら持ち運べますので、あまり問題にならないのです。
流川さん
本当にプロが現場で使いやすくできているんですね。
三輪さん
逆に技能試験の単位作業は条件がかなり変わってきます。
まず天井裏のような狭い場所ではなく、机上で座っての作業です。ある程度横に動かす余裕もあり、また外装はぎ取りや被覆むきの量もたかが知れています。
流川さん
た、たかが知れている!?
野田さん
あんなに大量にむいたと思ったのに〜!?
三輪さん
そうなんです、プロが作業する作業量と比べると、そこまでではないんです。

そうすると、やはり1台で1.6mmも2.0mmも扱えるこのタイプのケーブルストリッパーのメリットが生きてきます。
流川さん
何せ1台ですべて賄えるのですから、2台も必要ありません。
流川さん
な、なるほど。
野田さん
それにこのケーブルストリッパーは試験に特化しているだけあって、先端部分でランプレセプタクルや露出コンセントに接続する輪づくりをしたりできます。
流川さん
また携帯しやすいということで、プロの方も携行されていることも多いんですよ。
流川さん
そうやって現場では使い分けているんですね。
三輪さん
そしたら、これは試験には持っていかないで、試験に受かってから現場で使おうっと!
野田さん
先輩に返さないの…?
三輪さん
(…先輩との関係は大丈夫でしょうか…?)
流川さん